長期保管する際のバッテリー上がり防止策

自然放電と暗電流からバッテリーを守る端子の切り離し

バイクに乗らない期間が数週間から数ヶ月に及ぶ場合、最も手軽で効果的な対策はバッテリーのマイナス端子を外しておくことです。 バイクはエンジンを切って鍵を抜いた状態でも、時計のメモリー保持やイモビライザー(盗難防止装置)の作動のために、ごくわずかな電力を消費し続けています。 これを「暗電流」と呼びますが、もともと容量の小さいバイク用バッテリーにとって、この微弱な消費が数週間続くだけで、次にエンジンをかけようとした時にはセルモーターが回らないほど電圧が低下してしまうのです。 さらに、バッテリーは何も繋いでいなくても内部の化学反応によって少しずつ電力が失われる「自然放電」という特性も持っています。

端子を外す作業自体は非常にシンプルですが、必ず守らなければならない鉄則があります。
それは「外す時はマイナスから、付ける時はプラスから」という順番です。
マイナス側は車体のフレーム(金属部分)と繋がっているため、もしプラス側から先に外そうとして工具がフレームに触れてしまうと、激しい火花とともにショートし、電装系に致命的なダメージを与える恐れがあります。 プラス側の赤いカバーが付いた端子を触る前に、必ず黒い線のマイナス端子を浮かせ、絶縁テープなどで端子がバッテリーに触れないよう保護しておきましょう。
これだけの作業で、暗電流による無駄な電力消費を完全にシャットアウトでき、数ヶ月後の始動性を劇的に高めることができます。

維持充電(トリクル充電)を活用した理想的な管理

端子を外すだけでは防げない「自然放電」への対策として、最も理想的なのがバイク専用の充電器を用いた「維持充電」です。 特に「トリクル充電」や「メンテナンスモード」を搭載したインテリジェントチャージャーは、バッテリーの電圧を常に監視し、減った分だけを微弱な電流で補う機能を持っています。 長期間繋ぎっぱなしにしても過充電によるバッテリー液の減少や劣化の心配がなく、常に満充電に近い「いつでも走り出せる状態」をキープしてくれます。 最近の製品には、車体に専用の配線を常設しておき、カプラーを差し込むだけで充電を開始できるタイプも多く、シートを外す手間さえ省けるようになっています。

注意点として、必ず「バイク専用」の充電器を使用してください。
自動車用の充電器は流れる電流(アンペア)が大きすぎ、バイクの小さなバッテリーを痛めてしまう原因になります。
また、充電を行う際は、ガソリンの気化ガスが溜まらないよう、できるだけ換気の良い場所で行うのが安全です。
もしガレージにコンセントがない場合は、面倒でもバッテリーを車体から完全に取り外して室内へ持ち込み、数週間に一度のペースで定期的に補充電を行うのがベストです。 一度完全に上がってしまったバッテリーは、たとえ充電して電圧が戻ったとしても、本来の性能(寿命)が著しく低下していることが多いため、上がる前に「注ぎ足す」管理が最も経済的なのです。

寿命を延ばすための適切な保管環境と温度管理

バッテリーのコンディションは、保管場所の「温度」によっても大きく左右されます。
意外に知られていないのが、バッテリーは極端な低温環境に弱いという点です。
氷点下に近い環境ではバッテリー内部の化学反応が鈍くなり、取り出せる電気の量が著しく減少します。
冬場にエンジンがかかりにくくなるのは、オイルの粘度が上がるだけでなく、バッテリー自体の出力が低下していることも大きな要因です。
そのため、屋外にバイクを保管している場合は、厚手のバイクカバーをかけて冷え込みを和らげるだけでも一定の効果があります。

一方で、直射日光が当たるような高温多湿な場所も、自然放電を加速させ内部劣化を早めるため避けるべきです。 理想的なのは、急激な温度変化が少なく、湿度の低い日陰の環境です。 もし数ヶ月単位で乗らないことが確定している冬場などは、車体からバッテリーを外して室内の冷暗所で保管するのが、寿命を延ばすための確実な方法といえます。 また、保管前にはバッテリーの端子部分に腐食(白い粉のようなもの)が出ていないかチェックし、もしあればワイヤーブラシなどで清掃して薄くグリスを塗っておきましょう。 こうした細かな気配りが、春先に意気揚々とツーリングへ出かけようとした際、「カチカチ」という虚しい音を聞かずに済むための確実な備えとなります。